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鴨川星空浪漫飛行⑥

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特別寄稿 新たな挑戦が始まった 小惑星探査機「はやぶさ2」
JAXA はやぶさ2ミッションマネージャ 吉川 真

昨年(2014年)の12月3日、小惑星探査機「はやぶさ2」が種子島宇宙センターから打ち上がりました。2010年に地球に戻ってきて話題になった「はやぶさ」の後継機として、新たな挑戦の旅に出発したのです。
「はやぶさ2」につきましては、実は、2013年7月に、鴨川の皆さんにお話をしたことがあります。当時は、探査機の組み立てに入る前の個別機器の製作・試験の真っ最中でした。鴨川の皆さんに熱烈に応援していただいたお陰で、「はやぶさ2」が無事に打ち上がったのだと思います。そのときに鴨川に天文台を作りたいというお話しを聞きましたが、是非、実現して宇宙がより身近なものとなるといいですね。
さて、「はやぶさ2」ですが、小惑星という小さな天体に行き、詳しく調べてからその表面の物質を採取し地球に持ち帰るサンプルリターンというミッションを行う探査機です。地球などの惑星は、今から46億年くらい前に生まれたと考えられていますが、その後、かなり進化(変化)してしまいました。ところが、小惑星の中にはあまり進化していない天体があり、そのような天体から物質を持ち帰ると、地球がどのような材料から生まれたのかが分かります。「はやぶさ2」では、さらに有機物を含んでいそうな小惑星
(1999 JU3)から物質を持ち帰るので、生命の原材料も分かるかもしれません。つまり、太陽系や生命の起源を探ることが目的なのです。
「はやぶさ2」は、今年の年末頃に地球に戻ってきて地球の引力を利用して軌道を変更するというスイングバイを行います。そうすると、軌道が1999 JU3に近いものに変わります。そして、2018年の夏前くらいに小惑星に到着します。約1年半にわたって小惑星に滞在し、2019年末に頃小惑星から出発、2020年末に地球に戻ってくるというスケジュールになっています。
小惑星に到着するまでは3年半もかかりますが、これは、イオンエンジンを使いながら徐々に軌道を変更しているためです。イオンエンジンは従来の燃料を燃やすタイプのエンジンに比べて力は弱いので時間がかかってしまうわけです。ただし、イオンエンジンはとても燃費がよいエンジンなので、少ない量の燃料で長時間動作させることができます。つまり、探査機全体を小型
化・軽量化できるエンジンなのです。
この他、「はやぶさ2」には様々な技術的挑戦が詰め込まれています。探査機の制御やデータは電波による通信で地球とやり取りをするわけですが、「はやぶさ2」ではより高速な通信を試みます。電波による通信と言っても、距離が3億km以上もの彼方からの通信です。もう一つ新しいこととして、小惑星に人工的なクレーターを作り、地下の物質も採取しようという試みがあります。小惑星の表面は太陽からの光や放射線、隕石等の物質の衝
突を受けて変質していますが、なるべく変質していない地下の物質も採取してみようというわけです。
初代「はやぶさ」では、いろいろなトラブルや想定外の出来事が起こりました。この「はやぶさ」の経験をきちんと検討して、「はやぶさ2」では様々な技術的改良を加えています。このことでより確実な探査を行うということも、大きな挑戦なのです。
以上のように科学そして技術において、数々の挑戦をする「はやぶさ2」。その先には、自由自在に太陽系空間を移動している世界を夢見ています。現在、飛行機で世界を自由自在に移動できるようになりました。これは、ちょっと昔には考えられなかったことです。今度は、太陽系空間を自由自在に飛び回りたい、そんな時代が早く来るといいですね。